ホンダは2020年2月20日、今夏に発売を予定しているピュアスポーツモデル「シビック タイプR」をベースに、軽さと速さをさらに研ぎ澄ました限定車「シビック タイプR リミテッドエディション」に関する情報をホームページ(https://www.honda.co.jp/CIVICTYPE-R/new)で先行公開した。
現行シビック タイプRは“操る喜び”の提供を目指し2017年に発売。サーキットから市街地まで、さまざまなシーンに対応する高いパフォーマンスにより、国内の年間販売台数が約3000台を数えるなど好評価を得ている。
そんな「シビック タイプR」がマイナーチェンジを実施し、今夏発売される。さらに!「タイプR」の起源に立ち返り、軽量化や専用装備によってさらなるピュアスポーツ性能を追求した国内200台限定の「シビック タイプR リミテッドエディション」を設定、今秋に発売するというのだ。
まずは、「タイプR」の改良について。2020年1月20日に、ベースとなるハッチバック(およびセダン)モデルがマイナーモデルチェンジを実施。現行モデル発売以来、立ち止まらずに進化し続けるという思いで、エクステリアデザインの変更、ホンダの先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全車に標準装備した。
「タイプR」も、これに準ずる形で化粧直し程度の変更かと思いきや、そこは作り手の思いをカタチにした“プロダクトアウト型”の製品。開発者の並々ならぬこだわりや思いが込められている。しかも従来のマイナーチェンジでは踏み込まなかった領域にまで手を入れた意欲作だと、タイプR開発責任者の柿沼秀樹氏が自信を持って語る。
エクステリアは、シビックハッチバック同様、バンパーのデザインが変更された。
加えて、フロントグリルの開口面積を拡大(現行比でプラス13%)して冷却効率を高めるとともに、ラジエターフィンのピッチを現行モデルの3mmから2.5mmに狭めることで放熱性を向上。これらにより、サーキット走行時の最高水温を大幅に低減させた。
グリル開口拡大によるフロントのダウンフォース減少に対応するため、フロントバンパー下面に設けられたエアスポイラーの形状を変更。現行モデルと同等以上のダウンフォースレベルを実現した。
サーキット走行でのブレーキ性能をさらに高めるために、ブレーキディスクに2ピースフローティングタイプを採用。これにより、熱によるディスク倒れを抑えられ、連続走行時に起こるペダルストローク変化や踏力変化を大幅に減少。つねに安定したブレーキフィールが得られる。また、2.5kgのバネ下重量低減も実現し、運動性能の向上に寄与。
ブレーキパッドにおける有害物質の法規対応も取り込みつつ、摩擦材の特性変化に合わせてマスターパワーの最適化を図ることで、常用域でのコントロール性も進化している。
一体感やダイレクト感を高めるため、アダプティブダンパーシステム制御やサスペンションのブッシュ、ボールジョイントなどにもチューニングを施した。コーナーアプローチから脱出までの一連のハンドリング性能や、荒れた路面などでの接地性、制振性をさらに進化。
コーナリング時の所作で改良点を追ってみると、次のようになる。
ブレーキングからターンインまでのフロントサスペンションのフリクション低減、リヤサスペンションブッシュの剛性アップによりレスポンシブで滑らかな操舵応答と追従性を磨き上げた。
操舵により生じるロールとピッチングのタイミングに合わせ、ダンパーのロール応答制御をコントロールすることで、コーナーアプローチでの操舵に対し、車体が素早く追従。前輪が路面に吸いつくような感覚がさらに進化。
ターンインからミドルオフコーナーに関しては、リヤサスペンションの動的横力トーイン量の増加とともに、ダンパーのフロントアウト側とリヤイン側の減衰量を対角で上げることで、スムーズな旋回姿勢へ移行。車両姿勢の収まりのよさを進化させた。
ターンアウトではフロントサスペンションの前後剛性アップを図った。これによりトラクション性能が向上。全開加速時の前後左右Gの大きさに応じてダンパーの減衰配分を制御することで、強力なトルクを無駄なく路面に伝えられるようになり、オンザレール感覚がさらに高まった。
また、フロントロアボールジョイントのフリクションを低減。微小ストローク域のサスの動きやすさを向上させたほか、アダプティブダンパーシステムセンサーのサンプリング周波数を高めてノイズを低減。ダンパー制御性がさらに進化したことなどで、荒れた路面を含め、あらゆる走行シーンでの接地性や制振性を向上させた。
こうした動的性能の進化だけでなく、さらなるドライビングプレジャーのためにインテリアにも手が入る。
走りの質感が高まった「シビック タイプR」は、ドライビング空間も進化。ステアリングホイールやシフトブーツにスウェード表皮「アルカンターラ」を採用し、質感の統一を図った。ステアリングホイールは、従来採用していた本革よりも素材が薄いため、そのまま使用すると握りが細くなる。これを解消するため、アルカンターラ表皮の下に裏地を2枚重ねて、握り部の外径を維持。グリップ表面の硬さもそろえて、手になじむようにするなど、手の込んだつくりだ。
また、“クルマとの一体感”のさらなる進化を目指し、2007年から10年にわたり使用された丸型シフトノブからティアドロップ型に形状を変更。ノブの傾きが認識しやすくなり、操作精度も向上するという。また、アルミ素材のシフトノブの中に90gのスチール製カウンターウエイトを内蔵した。トランスミッション側とシフトノブ側双方の荷重バランスをそろえ、さらに気持ちのいいシフトフィールが得られる。
今回の「シビック タイプR」で、これまでにない進化と言えるのが、ホンダの先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」を標準装備としたことだろう。これはシビック ハッチバックに採用する機能と同等で、アダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、車線維持システムなどを備える。操る喜びと安心してドライブできるツーリング性能を兼ね備える。もちろん、ドライブモードでキャンセルもしくは個別での設定変更が可能なので、サーキット走行時に過度に介入することはないというから安心だ。むしろ、普段の使用シーンでの安心機能として、こうした安全装備が備わることは喜ばしいことではなかろうか。
ボディカラーは新色として、レーシングブルーパールとポリッシュドメタルメタリック(国内は新色)を設定。従来からのフレームレッド、チャンピオンシップホワイト、クリスタルブラックパールと合わせて全5色をラインアップする。
走りのよさだけでなく、グランドツーリング性能も兼ね備えるスポーツカーとして作り上げた現行モデル。ベースモデルでの“速さ”は、“FFニュル最速タイム”をたたき出すなど折り紙付き。
ただ、それだけでは開発者の熱き思いは収まらず、さらなる熟成と進化を極めるため、「軽量化」を軸に、走りへのこだわりを追求したのが「シビック タイプR リミテッドエディション」だ。
90年代のタイプRをほうふつとさせるサンライトイエローを復刻し、新たに「サンライトイエローⅡ」と命名。これにルーフなどをブラックカラーとした専用の2トーンカラーをまとう。
速さと軽さを研ぎ澄ませた世界約1000台の限定生産モデルで、日本国内では200台が用意される。
「リミテッドエディション」はピュアスポーツ性能をさらに磨き上げるため、ダッシュボードやルーフなどの防音材を削り、車体の軽量化を実施。専用のBBS鍛造アルミホイールと合わせて23kgの軽量化を実現。防音材の削減については室内に伝わる音をチューニングすることで、ダイレクトなエンジンサウンドが楽しめるという。
足元には、ホンダのスポーツモデルとして2002年のNSX タイプR以来となるBBSとの共同開発による、「リミテッドエディション」専用の鍛造アルミホイールを装着。ボディの軽量化と軽量な鍛造ホイールによるバネ下重量の軽量化により、さらなる軽快な身のこなしや路面追従性を実現。「リミテッドエディション」ならではのスポーツフィールを実現する。ツヤ消しブラック塗装で足元がより引き締まる。
タイヤはミシュラン パイロットスポーツ カップ2を装着。ドライのパフォーマンスに特化したコンパウンドにより、さらなる速さを追求。ちなみに専用開発品ではなく、手に入れやすいリプレイス品だ。
これらの装備変更を実施したうえで、ダンパーシステムとEPSを専用セッティング。最大限の性能を実現する。
専用のサンライトイエローⅡをまとう「リミテッドエディション」は、ルーフとボンネットンインテークカバー、ドアミラーキャップがブラックとなる2トーン仕上げで特別感もたっぷり。さらにリヤの「CIVIC」エンブレムと、そしてシフトノブ手前に入るシリアルナンバープレートにクローム処理が施される。
速さを追究する「リミテッドエディション」にもホンダセンシングは、もちろん標準搭載。その実力は、価格も含めて大いに気になるところだが、発売まではしばらく時間がある。
「シビック タイプR」と限定モデル「シビック タイプR リミテッドエディション」の購入方法などの情報は、先行公開ページにて順次明らかになる!
https://www.honda.co.jp/CIVICTYPE-R/new
〈文=driver@web編集部〉
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