2019/07/16 ニュース

【世界初試乗】新顔「マツダCX-30」は機能も語れるコンパクトSUVだ!

”使える”マツダコンパクトSUV


大人4人が快適に過ごせる室内空間と、日本で主流のA型やB型だけでなく海外の大型ベビーカーまで簡単に積み込む広い荷室を備えることが、マツダがCX-3とCX-5の中間より、ややCX-3寄りのコンパクトクロスオーバーカテゴリーに投入したCX-30の、もっとも重視したところだったという。確かに、前席のカップルディスタンスはCX-5並み、後席にも十分なスペースがあって、室内は全席リラックスできるし、荷室の容量そして開口部の幅や床面高まで吟味された使い勝手も上々と言っていい。
●開口幅は1020mm。幅1mの箱を両手で持ってそのまま入れられる設計だ(20mmは両手分の寸法)。荷室容量は430リットルで、マツダ3(ファストバック)から約100リットル増。CX-3比でも約80リットル増えている。パワーリフトゲートも設定、その静かな開閉動作も注目点
すさまじい勢いで市場が拡大しているこのセグメント。マツダにはすでにCX-3があるが、コンパクトでスタイリッシュであることを優先したCX-3は若いユーザー、あるいはシニアに支持される一方、このセグメントのコアであるヤングファミリーには今ひとつアピールできなかったのだという。よって生まれたのが、このCX-30。マツダにとってはハズすわけにはいかない1台である。

絶妙なサイズ感を美しいスタイルで実現


●ホイールベースはマツダ3よりも70mm短い、2655mm。取りまわしのよさを重視した結果だ
全長4395mm×全幅1795mm×全高1540mmというボディサイズも理詰めで導かれている。その全長は、ヨーロッパで全長4500〜4700mm近辺のDセグメントカーが縦列駐車していたところに容易に滑り込めるように。全幅は、日本でのコンパクトカーの実質的な上限であり、また海外含めた地域問わず都市の狭い路地で難無くすれ違いできる大きさとして設定された。そして全高1540mmは、日本の立体駐車場に入る高さである。燃費のための空力も意識されたに違いない。それでいて機能主義的に振り過ぎず、デザインの美しさも疎かにせず追求しているあたりは、今どきのマツダ車らしい。リヤウインドーを寝かせたクーペフォルムながら、じつはルーフは後端まで高いままとして居住性を確保。リヤゲートを微妙に後方に張り立たせて荷室容量も犠牲とせずに済ませている。ボディ下半分を覆うクラッディングパネルがボディパネル面を天地に薄く見せているのも効いていて、スマートな外観を描き出しているのだ。
●メーターフードを起点に助手席側のドアトリムまでカーブを描くのがマツダ3との識別点。写真はネイビーブルー内装で、マツダとしては目新しいカラー。そのほかリッチブラウン内装なども用意
インテリアも洗練されている。操作系やスイッチ類が集中する運転席まわりから助手席の方向にかけてスッキリと収束していく造形が、細部に至る高いクオリティと相まってに居心地の良さに繋がっているし、Aピラーが非常に細く視界も上々。特に派手な仕立てではないが、長く飽きずに付き合えそうな雰囲気となっている。
●CX-3では厳しかった後席スペースも、大人2人が十分にくつろげる広さを得た

文句のない操縦性はさすが


●今回は、2リットルガソリンのマイルドハイブリッドと、日本でも主力となるであろう1.8リットルディーゼルに試乗した
このCX-30を、日本での発売よりひと足先にドイツ フランクフルト郊外で試した。欧州仕様の2リットルガソリンエンジンに24V電装系を使ったマイルドハイブリッドの“Mハイブリッド”と、1.8リットルディーゼルの両方のステアリングを握ったが、いずれも共通して、非常に走らせやすいクルマに仕上がっているというのが第一印象である。何しろ操舵応答は素直だし、その際のクルマの状態をしかと伝える濃密な操舵感も心地よい。狭い路地、ずらり並ぶ駐車車両の間を抜けるとき、あるいはラウンドアバウトでステアリングを右に左に操作するときなど、街なかでもクルマとの心地よい一体感を味わうことができる。ましてコーナーが連続する山のなかを行くときなどは、まさに水を得た魚という趣なのだ。静粛性の高さにも目を見張った。基本設計の時点からの徹底した対策、さらには吸音効果をもたせたフロアカーペットや天井など、細かな部分に至る配慮が功を奏しているようだ。マツダ3もそうだが、従来世代のマツダ車のイメージ、完全に覆される。

気になるのは、パワートレーン


●CX-3にも、CX-5にも似ていない独特のフォルム。機能と個性を両立したCX-30ならではのスタイルだ
パワートレーンはどうか。ガソリン+MハイブリッドはISGによるスムーズな始動で期待を抱かせるが、全域でトルクが薄くてMTではペースを維持するために頻繁なシフトダウンが求められた。ATのほうが走らせやすいが、それでもアクセル開度は大きくなりがちだ。今回乗れたのは燃費最優先の欧州仕様とのことだが、正直なところパワートレーンとしての魅力は今ひとつだ。一方の1.8リットルディーゼルはトルクの余裕があり、アップダウンが連続する場面でもアクセル開度を大きく変えないで済むからストレスも肉体的な疲労も小さい。特に今回はドイツでの試乗ということで速度域が高く、ストップ&ゴーの頻度が少なかったのも好印象に働いているのだろう。アクセルを深く踏み込んでの加速時などは、やはり少々荒っぽい音が響く感じもあり、車体がなまじ進化しているだけに、あと一歩の洗練を望みたいとも感じたが……。そのあたり、のちに加わる予定のSKYACTIV-Xも気になるところである。
前述のとおり、マツダにとって絶対にハズすことのできない存在だということもあり、CX-30は全方位非常によくまとまったクルマに仕上がっている。コンセプトが明確で、ハードウェアも見事にそれを具現化している。しかもデザインや、マツダの言う人間中心の走りなど、独自の魅力も十分。唯一パワートレーンだけは物足りなさを感じたが、それでもCX-30、ヒットの予感を存分に漂わせるクルマであることは間違いない。〈文=島下泰久〉

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